わたしの鍼灸

わたしは「痛くない、怖くない鍼」を提供すると謳っています。わたしの施術のスタートは、直径0.12㎜の極細の鍼で始まります。ここまで細い鍼だと「痛い、怖い」ということは殆どありません。(ただし技術がないと鍼が簡単に曲がります)

この鍼の刺激で十分な方は、そのまま施術を進めていきます。症状や体質によって、細い鍼で浅部を中心に施術したほうがよい方は一定数いらっしゃいます。

 

では、この細い鍼で施術のすべてが完結するかというとそうではありません。いろいろと研究してきましたが、症状が深い場所にある方は深い鍼を必要とすることが多いです。

例えば、骨軟骨に変形がある方、手足に痺れがある方(内科疾患ではない)などは深い鍼をすることが多いです。

 

鍼は人が簡単に触れることが出来ない深部にある反応に触れることができ、インナーマッスルにまで鍼先を持っていけます。これは鍼の大きなアドバンテージです。

徒手でも身体の深いところにアプローチする方法がいくつもありますが、高い効果を出すのが難しく、だるさや痛みなどの副反応が出やすいです。

鍼とても小さな1点で患部にアプローチできるので意外にも副反応が少ないです。

 

このように述べると、鍼はよく効のだと感じるかもしれませんが、きちんと効く鍼灸を提供するのは難しいことです。

難しさその①施術で使う鍼の種類と刺激量をその人にとってちょうど良いところを見つけること

鍼灸はその人にとって丁度よい刺激を提供しなくてはいけません。(これは徒手による施術でも同じです)

人の身体は皆さん違うので体質症状によって、どのような鍼を使い、どのような施術を提供するか決めていくのは難しいです。強すぎる刺激やその人の身体がついていけない変化を提供すると、その施術は失敗となります。(逆に刺激が弱すぎて身体の変化が小さければ、次の予約を取って貰えません)

患者様の身体をより多く知ることで、迷わずその方の身体に合った施術を提供できるようになります。

 

難しさその②身体に出ている症状や反応を正確に理解し、ツボを取り刺激すること

短く書くと簡単なようにも聞こえる内容ですが、これはとても難しいです。

まず、最初に患者さんが施術室に入ってきた時の動作、立っている、座っているなどの動きを観察し、身体のどこに緊張があって、どこに凹みがあって、どこに歪みがあって、どこが辛いであろうかを観察します。

それから本人とお話して、自分が観察した情報と本人の訴えが一致するか、しないのかをチェックして再考していきます。

そして、施術を進めながら、その人がの身体が変わる反応点、ツボを正確に捉えます。

 

ツボを正確に取穴し刺激すれば、身体は変化を起こしますが、人間の広い体表面からわずか0.数mmの点を取穴し、鍼で刺激を与えるのは難しいことであって、年月をかけて研磨していく技術です。

ツボは教科書に書かれた内容だけでは理解できません。仮に教科書の記載と同じ場所にツボがあったとしても、ツボの角度、深さ、方向は自分の手で探り反応を捉えなくてはなりません。

鍼灸はツボを正確に取穴することが大切です。一つは効果が変わってしまうからで、もう一つは、ツボに納まった鍼は痛くないからです。

 

鍼灸の難しさを何年も感じながら、考え施術を組み立てて来ましたが、「痛くない、怖くない鍼灸」と言っても浅部だけ刺激しているわけでも、極細の鍼だけを使っているわけでもありません。

何年間かは、「刺さない、もしくは微弱な刺激で症状の改善が起きたら、患者様の負担は小さい」と思って随分と研究してきました。

今は、「受け手が楽に受けられる、心地よさを感じるように鍼灸の施術を進めていけるようになった」という到達点にいます。

 

わたしは今も、患者様が「良くなるためだ」と言い聞かせ、痛みや恐怖を我慢し、身を固めて受けるような鍼灸の施術はしたくないと思っています。

出来るだけ刺激は最小限にすることや、施術中は「快適さ、心地よさ」を感じてもらうために、これからもこのような鍼灸を研究していきます。もちろん、これにはきちんとした改善を提供することも含まれます。