知り合いの方と頭痛
知り合いの方が頭痛で来院されました。ご縁があった方が来てくれるのは嬉しいことです。鍼灸は人に喜ばれる仕事で、私がお世話になった方に恩返しが出来たら、尚、嬉しい。当初はそんなことを考えていたような気がします。
鍼灸の施術はスタートは順調だったと思います。身体がとても繊細で、最初は一番細い鍼だけで施術をしました。そのまま優しい施術を繰り返し提供していけば良かったのですが…
この方と同じように頭痛を訴える方の来院は多いです。頭痛の改善が早い方も遅い方もいます。鍼灸を受けて、頭痛がどんどん改善していく方は良いのですが、ご本人が想像したペースで改善しないと、鍼が効いていない、と不満や不安に感じる方もいます。
そのようなときは、なぜ頭痛が起きているのか、どうしたら頭痛が出ないようになるのか、生活習慣、食習慣、姿勢などに問題がないか、体質的な説明をしながら一緒に考え、改善を促します。
鍼灸を行うときはわたし自身は「無」になり、客観的に相手の身体を診ていきます。相手と私は常にニュートラルな位置にいて、相手に近づくことは決してありません。常に俯瞰的に身体を観察します。
しかし、知り合いの場合、感情移入しやすく「辛いよね、私が何とかしてあげる」的な情動で動いて、冷静さや客観性が失われやすいです。ここに知り合いを施術する難しさがあります。
今回がまさにそんなケースだったと思っているのですが、相手に感情移入したわたしが、改善を促すために自分の持っている鍼灸の技術をどんどん提供していきました。
この変化していく鍼の技法に相手の体質に沿わないものがあったと思っています。
結果、施術方法を変えながら提供を続けてきたある日、鍼灸の施術を受けた3日後に頭痛が起き、施術はストップになりました。
鍼は身体の変化を大きく起こせますが、虚弱であったり、変化に弱い方もいて、身体に変化を起こせば良いというもではありません。
その方にちょうど良い身体の変化を提供することが、体調の良さを生みだします。
鍼灸で身体に変化を起こす技術があるのだから、相手に感情移入せず、冷静に相手を診て弁証論治し、施術を提供する。余計なことはしない。この大切さを痛感した症例でした。
この経験から単に鍼の技術が高くなるだけでは完結しない。感覚的なものをより多く扱う仕事だこらこそ、自分の心のあり方というのがとても大切だということを改めて感じました。